
無用橋

かつて川や用水路に架かっていたものの、「川が埋め立てられた」「水路が暗渠化された」「道路整備で橋としての役割を失った」などの理由で、橋の欄干や親柱だけが地上に残っている物件です。
代表的な事例
二ヶ領用水跡の無用橋(川崎市)
水路が埋め立て・暗渠化された場所に、橋の欄干や親柱が残った事例として広く紹介されています。二ヶ領用水は川崎市内を流れる歴史的な人工用水です。
埋め立てられた川に残る橋の欄干
川そのものが道路や公園になった後も、「○○橋」と刻まれた親柱や欄干だけが道路脇に残っているタイプです。東京都中央区八丁堀の旧桜川に残っていた橋などが観察例として報告されています。

普通の道路の両側に橋名を刻んだ石柱だけが立ち、見た目では川があったことさえ分からないものです。これは無用橋の典型で、昔の地形や都市の変化を読み取れる「痕跡」でもあります。
その名の由来
無用橋とは言いえて妙です。
名付けたのは前衛芸術家兼作家の赤瀬川原平。街の中に残る「役に立たないのに、大切に保存されている建築物や設備」のことを「超芸術トマソン」と名付け、その中に無用橋も一つのカテゴリーとして含まれています。
他のカテゴリーとして「上った先に何もない階段」「壁で塞がれた扉」「何も覆っていない庇」「建物を撤去した跡が壁に残ったもの」などがあります。

前々回のブログで登場した新大阪付近のお話ですが、あたりは低湿地帯だったので1678年に全長約9.2キロメートルの農業排水路が造られました。この排水路につながる小さな排水路が東淀川区には複数ありました。今は埋め立てられて道路になっていますが、あちこちに橋の名残があります。
このように無用橋の存在は、その地の元々の姿を調べるきっかけになります。
余談ですが、超芸術トマソンの由来は、往年の巨人ファンならピンと来るでしょう。
1981年と1982年の2年間、読売ジャイアンツに在籍したゲーリー・トマソン選手がその由来です。「トマ損」とも揶揄された三振王で、あたかも空振りを見せるために4番に据えられ続けているかのようなその姿が、ちょうど「土地や建物に付着して保存された無用の長物」という概念を指し示すのにぴったりだったとのこと。

さて、橋があるということは、そこに川や堀、または水路があるということ。今は見当たらないというのであれば、それらは人の手によって姿を変えられたということに他なりません。なぜ姿を変えたのかは、町が人の住みやすい方向へと整えられたからです。
不同沈下の危険を探るためには、もともとこの辺り一帯はどのような環境だったのかを掴むこと、いわゆるロケーションです。これから新居のための土地をお探しなら、その地域を散策することをお勧めします。そして皆さんも「無用橋」を見つけてください。

