
地盤事故は建築の瑕疵

日本の総人口は2009年をピークに減少が続いています。
しかし世帯数は今も増え続けていて、減少に転じるのは2030年と予測されています。
世帯数が増えるということは、その数だけ住居が必要とされます。これまでは新築がその需要を支えていました。しかし今は空き家が約900万戸もあり、ここから数年でその数が飛躍的に増えるとされています。その理由の一つは世帯数が2030年から減少するから。
人口が減るのに世帯数が増えるという現象は、高齢者の一人世帯が増えるからです。その一人世帯が2030年にピークを迎えるということは、そこから一気に空き家が増えることを意味します。
世帯数増加とともに地盤事故も増加
未来のお話から、過去へと時計の針を戻します。日本の住宅着工数は1973年に約190万戸を記録しました。家を建てるには土地が必要です。しかし日本の可住地と呼ばれる平野や盆地は国土の30%しかありません。その結果、造成地が増えます。
1960年から1970年にかけては都市周辺に大規模宅地造成が急増します。都市部なので山を切り開いたり沼を埋め立てたりはそれほど多くなかったでしょう。しかし1970年代から1980年代中頃にかけては、郊外ニュータウンの開発が進みます。

「希望ヶ丘」「光ヶ丘」「虹ヶ丘」などの聞こえの良い地名が日本のあちこちで生まれました。
新しくできた駅の改札を抜けると緩やかな坂がどこまでも伸び、左右に瀟洒な家が立ち並ぶ。カラフルな遊具の公園があり森があり川があり、洒落たカフェの隣には少し場違いな神社が見える。これがステレオタイプのニュータウンのイメージではないでしょうか。
でも郊外ですのでもともとは山あり谷あり池あり沼ありです。
曲がった川はまっすぐに整えられ、山は切り崩され池や沼は埋め立てられる。
瀟洒な家が並ぶ小高い丘は山を切り崩した場所、駅周辺はかつての谷、公園は沼や池の埋立地。古来からの姿を残しているのは神社だけ。そういった宅地にふさわしくない土地を開発した結果、1990年頃から各地で地盤沈下による被害の報告が相次ぎます。その中には阪神淡路大震災で擁壁などが倒壊し、造成不良が指摘された地域もあります。

2000年の建築基準法改正
これを受けて国土交通省は2000年に建築基準法で初めて「地盤」に関する法制度を整備しました。それまでにも地盤調査を行い、軟弱地盤には改良工事等の対策が施されていましたが、義務ではありませんでした。2000年の法改正は、不同沈下等に起因する建物の損害は「瑕疵」にあたると、軟弱地盤対策の責任を建築事業者に課すことを定めました。
建築上の「瑕疵」とは「建物が通常備えるべき性能・品質を欠いていること」です。
瑕疵が発見された場合は、無償で欠いている性能・品質を補う義務が建設業者には課せられています。要約すると、「不同沈下の起こらない家を建てなさい」と法的に義務化されているということです。
本来なら、不同沈下等が起こらないような堅固な地盤を手に入れるべきなのですが、地盤は調査してみないと強さや性質がわかりません。土地の売買のときに地盤調査をしようにも、どこにどのような家を建てるのかが決まっていないので、結局は建築プランが決まってからの地盤調査になります。ですから工務店やホームメーカーの見積もりには、必ず地盤改良工事費用が含まれていたり、別途発生する可能性があることが明記されています。
今回は法律のお話になりましたが、お伝えしたいことは家を建てる際には土地の前歴を知ることが大切だということです。谷や沼を埋め立てた土地には軟弱地盤層が含まれている可能性があります。できるだけ健全な土地を見つけていただくため、また軟弱な土地だと覚悟を決めて購入いただくために、ご自身でも土地の性質を理解するように心掛けてください。
